〇第4弾[役所調査(その他法令)編]不動産調査について解説します!

不動産調査における役所調査とは?

役所調査の話題に入る前に、不動産調査全体の流れや概要について解説したコラムがありますので、まだお読みでない方はぜひ一度参考に読んでみてください。

(こちらから全体の流れや概要についてのコラムへ移動できます。)

今回は、不動産調査の一つの要素である[役所調査]に焦点を当てて解説していきたいと思います。

まず[役所調査]とは、市町村や都道府県などの行政機関に対し、法令上の制限について聞き取りを行うものになります。

法令とは、全国的に適用される[法律]や、自治体の独自ルールとして制定された[条例]などを指します。条例による規制がある場合、自治体によって必要な手続きや規制内容が異なりますので、必ず対象となる不動産が存在する自治体に対して調査を行う必要があります。

[役所調査]は、確認するべき項目がたくさんあるため、今回の記事では[その他の法令]に関する調査内容について解説させていただきます。

建築基準法や都市計画法の他に必要に応じて確認するべき項目について解説させていただきます。

農地法

農地法は農業の保全や振興を目的とした法律です。

農地法第3条~5条で定める許可制度が必要かどうかを確認する必要があります。各条文の概要は以下のとおりです。

第3条
農地の権利移転等をする場合、許可が必要

権利移転等には、所有権の移転のほか地上権や賃借権等の権利設定も含まれます。

農家等へ権利移転等をする場合などがこのケースに該当します。

第4条
農地を宅地や雑種地などに転用する場合、許可が必要

自己所有の農地を転用する場合、このケースに該当します。

第5条
農地を転用することを前提として権利移転等をする場合、許可が必要

不動産会社などが農地を買って(または借りて)転用する場合、このケースに該当します。

なお、第4条と第5条に記載のある転用についてですが、市街化区域内の農地であれば許可ではなく届出のみで手続きが済みます。

農業委員会ごとで許可申請の審議の頻度が異なるため、締め切りを合わせて確認しておく必要があります。直近の締め切りを逃すと次の審議まで1か月期間が空いてしまうといったこともありますので、準備はなるべく早めにしておくことをオススメします。

農地法の対象となる農地かどうかは、登記上の地目で判断するわけではなく、農業委員会によって判断されます。実態が農地であれば手続きが必要な場合もあれば、地目は「田」や「畑」ですが、すでに転用済みで手続きがいらない場合もあります。

確認すべき項目(まとめ)

  • 申請書提出の締切および審議の時期
  • 農地法の対象となる農地かどうか
  • 手続きが必要な場合、流れと必要書類

農振法

対象の土地が農地である場合、農用地区域内農地であるかの確認をする必要があります。

農振除外とは

農用地区域内では農業目的以外の土地利用が制限されていますので、農用地区域内の土地を農業以外の目的で利用しようとするときは、農用地区域からの除外をすることが必要です。農用地区域(青地農地と呼んだりします。)に該当している場合、農地転用の手続きの前に「農振除外」の手続きをする必要があります。

農用地区域内農地(青地農地)とは、市町村が定める農業振興地域整備計画で、将来にわたって農業のために利用していくべき土地として指定された農地です。農振計画の図面上で青色で塗られていることから、青地と呼ばれています。

除外の手続き

除外の手続きは次のようになります。

1.計画者が市町村に農用地区域除外の申し出をする。

2.市町村が農業振興地域整備計画(農用地利用計画)の変更もやむを得ないと判断した場合、変更の手続きを進める。

3.知事が市町村の農業振興地域整備計画(農用地利用計画)変更案に同意する。

4.農地転用や都市計画法の開発許可(または建築許可)が必要な場合、農用地区域から除外された後に、これらの手続きに着手する。

宅造法・盛土規制法

区域指定がされているかどうか確認する必要があります。

確認する項目は以下のとおりです。主に旧法(宅地造成工事規制区域)と新法(宅地造成等工事規制区域・特定盛土等規制区域)について指定されているかどうかの確認をします。

  • 宅地造成工事規制区域(旧法)
  • 造成宅地防災区域
  • 宅地造成等工事規制区域(新法)
  • 特定盛土等規制区域

土砂災害に関するその他の法令

宅造法・盛土規制法の他に、土砂災害に関する法令がいくつかあり、規制の対象によって大きく2つに分けることができます。

土砂災害の被害を受ける危険性のある地域に対する規制

土砂災害防止法(土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律)

土砂災害が発生した場合、被害を受けるエリアになるべく建物がないよう、被害対象を少なくすることを目的としたものです。

土砂災害の発生源となり得る傾斜地等に対する規制

砂防法・地すべり等防止法・急傾斜地法(急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律)

災害の原因となる傾斜地や崖などに対し、リスクが高まる一定の行為を制限しています。

土砂災害(特別)警戒区域や急傾斜地崩壊危険区域などに該当するか確認を行う必要があります。

文化財保護法

「埋蔵文化財」が対象地に埋まっている可能性があるかを確認します。

埋蔵文化財が埋まっている場所を「埋蔵文化財包蔵地」といい、役所が分布図に記載している包蔵地を「周知の埋蔵文化財包蔵地」といいます。

対象地が「周知の埋蔵文化財包蔵地」だった場合、工事着手の60日前までに教育委員会への届出が必要になります。

その後、「試掘」が行われ、必要に応じて「本調査」をする場合があり、それらが終わるまでは工事に着手することができません

「周知の埋蔵文化財包蔵地」に該当する場合、試掘などの調査のスケジュール感や負担する費用についての確認を行う必要があります。

道路や水路の占用・承認工事

道路と敷地の間に水路がある場合や、下水や雨水の接続、上水道の引込に際し、占用許可申請が必要になる場合があります。

また、道路や水路を一部でも工事する場合、承認工事の申請が必要になる場合があります。

建築計画によっては、これらの申請が必要になる場合があるため、道路や水路を管轄する部署へ確認を行う必要があります。

雨水の放流先

法令の確認ではありませんが、雨水の放流先について確認をする必要があります。

雨水排水は、建築計画に大きく影響する場合があるため、現地調査や役所調査を入念に行い、雨水の放流先について確認をしましょう。

基本的には、前面道路の道路側溝へ放流しますが、道路側溝がない場合、水路や雨水管へ接続します。

放流先によって手続きが異なりますので、放流先の公共施設の管理者へ必要な手続きについて確認を行います。

特定都市河川浸水被害対策法

特定都市河川に指定された河川の流域内で一定規模以上の開発行為で、かつ雨水が浸透しやすい土地を浸透しにくい土地に形状変更することを『雨水浸透阻害行為』といい、雨水浸透阻害行為をする場合、現況の土地よりも雨水が流出しないよう対策を講じる義務があります。(※流域とは、降った雨が最終的にその河川へ流れ出る区域、範囲をいいます。)

よくある例としては、田畑を宅地や工場、駐車場にする行為や、砂利駐車場をアスファルト駐車場にする行為があげられます。
雨水浸透阻害行為をする場合には、許可を得る必要があるため、対象の土地が特定都市河川の流域内かどうかを確認し、流域内の場合、建築計画を示して許可申請が必要かどうかを確認します。

愛知県参考リンク先

ここで紹介した「〇〇区域」は、マップあいちで確認できるものもあります。

ここからマップあいちへ移動できます。

さいごに

いかがでしたでしょうか。

この記事が一人でも多くの方のお役に立てると嬉しいです。

当事務所では、不動産調査業務の代行を行っております。(不動産調査業務のページはこちら)

ご不明な点がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください!

最後まで読んでいただきありがとうございました。

水田

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