〇第3弾[役所調査(建築基準法)編]不動産調査について解説します!

不動産調査における役所調査とは?

役所調査の話題に入る前に、不動産調査全体の流れや概要について解説したコラムがありますので、まだお読みでない方はぜひ一度参考に読んでみてください。

(こちらから全体の流れや概要についてのコラムへ移動できます。)

今回は、不動産調査の一つの要素である[役所調査]に焦点を当てて解説していきたいと思います。

まず[役所調査]とは、市町村や都道府県などの行政機関に対し、法令上の制限について聞き取りを行うものになります。

法令とは、全国的に適用される[法律]や、自治体の独自ルールとして制定された[条例]などを指します。条例による規制がある場合、自治体によって必要な手続きや規制内容が異なりますので、必ず対象となる不動産が存在する自治体に対して調査を行う必要があります。

[役所調査]は、確認するべき項目がたくさんあるため、今回の記事では[建築基準法]に関する調査内容について解説させていただきます。

調査内容の解説に入る前に、[建築基準法の目的]について解説させていただきます。

建築基準法とは

建築基準法とは、どのような目的で制定されたものなのでしょうか。

建築基準法一条で以下のとおり目的が定められております。

(目的)

第一条 この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。

建築基準法第一条

簡単な言葉に置き換えると、建物を自由に建ててしまうと、近隣住民や周辺環境に悪影響を及ぼす可能性があるので、建物の構造や使い方に最低限守らなければいけないルールを定め、悪影響がでないようにすること目的としています。

例えば建築基準法がなかった場合、本来であれば土地の所有者は、その土地を自由に使えるはずです。戸建住宅を建ててもいいですし、大きな工場や高層マンションだって建ててもいいことになります。

しかし、これらの建物に制限がないとどのようなことが起こるでしょうか。

例えば、ゆったりとした住宅が建ち並ぶ地域に大きな工場が建設された場合、その地域にもともと住んでいる方は住環境が侵されるのではないかと心配になるでしょう。

また、古き良き街並みがみられる地域にポツンと高層マンションが建つと、せっかくの景観が台無しになってしまいます。

このように、その地域の特徴を加味して、または今後どのような地域としていくか「都市計画」で定められている地域では、都市計画を実現するため、建築可能な施設を制限しています。

また、エリア的に要件を満たせばどんな建物でも建てられるわけではありません。

例えば、建物が倒壊した場合、隣地の家も巻き込んでしまったり、最悪の場合、人の生命や身体を脅かすことになります。

それらを防ぐため、建物の構造や設備について基準を設けることで安全性や衛生状況を確保しています。

そのため、建築基準法では、地域的な制限と建物単体に関する制限に大別されます。

このように、土地に建物を建てる場合、建築基準法に関する様々な制限を受けることになるため、建築を計画する際は、どのような制限を受けているのかを確認する必要があります。

役所調査(建築基準法に関するもの)では、以下のような項目の確認を行います。

建築基準法による制限

建築基準法では、対象の土地にどのような建物を建てることができるかについて制限をかけています。

確認するべき代表的な項目について、項目ごとに解説いたします。

防火規制について

防火規制は火災による被害を最小限にするために指定されるものです。用途地域もそうですが、役所調査の時点では中身の規制内容全てを把握する必要はありません。

調査地がどの地域に該当するかを確認しましょう。

  1. 防火地域
  2. 準防火地域
  3. 新たな防火規制区域
  4. 建築基準法22条区域
  5. 防火規制なし

調査地が防火規制のある地域だった場合、建築をする際に、燃えづらい資材を使う必要があります

いずれにも指定されなかった地域や、都市計画区域外の木造住宅地については、原則22条区域になります。

高度地区について

高度地区とは、建物の最高限度や最低限度を定めたものになります。ここの地域は、最低〇m以上の建物を建てましょう!といった最低限度を設けるものもあれば、最高でも〇m以下の建物しか建てられません!といった最高限度を設けるものもあります。

高度地区では〇mまでといった高さだけを規制するだけでなく、近隣の建物の日当たりや通風、採光を確保するため、斜線制限を設ける場合もあります。

斜線制限には、道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限などがあります。

特別用途地区について

特別用途地区とは、用途地域だけでは規制しきれない場合、特別用途地区により厳しく制限したり、逆に制限を緩くしたりするために指定されます。

例えば、大学などの教育施設がある地域に風俗やパチンコ店などの店舗がある場合、教育上悪影響を及ぼす可能性があります。そのような場合に、風営法関連の施設を規制するため「文教地区」として指定し、一部の営業を規制するような場合に設けられる場合があります。

風致地区について

「都市の風致」とは、都市において水や緑などの自然的な要素に富んだ土地における良好な自然的景観であり、風致地区は、良好な自然的景観を形成している区域のうち、土地利用計画上、都市環境の保全を図るため風致の維持が必要な区域について定めるものです。

例えば、自然豊かな空間に奇抜な建物が建つと景観を損ねてしまいます。自然豊かな空間を保全するために設けられた地域地区であるため、木の伐採なども許可制になる場合があります。

風致地区内で建物を建てる場合、外壁の色は白や茶色など自然豊かな空間に馴染むような色指定があったり、塗料も光沢がないものを使う必要があったりします。

また、建物だけではなく、建築工事の際に緑化をする必要があるなど、自然空間の保全を目指した規制がかかります。

建蔽率・容積率について

建蔽率、容積率は建物の大きさに対する制限です。用途地域ごとに基準となる数値が指定されています。

建蔽率とは

建蔽率とは、採光の確保や空地を設けることで延焼を防ぐ目的で定められています。土地全体の面積(敷地面積)に対する建築面積の割合を「%」で表示したものになります。

例えば、100㎡の土地に40㎡の建物が建っていれば建蔽率は40%となります。

建築面積とは、ざっくり説明すると建物を真上から見た時に見える範囲の面積です。自分が鳥になって空を飛んでいると思ってみてください。その時に見える範囲が建築面積だと思っていただければいいかと思います。

正確には、1m控除などのルールもあるため正しく建築面積を出したい場合は、個別に建物の構造を確認する必要があります。

容積率とは

容積率とは、土地全体の面積(敷地面積)に対する延床面積の割合を「%」で表示したものになります。

分母を敷地面積とする点は建蔽率と同じですが、分子が建築面積ではなく延床面積で計算する点が違います。

例えば、100㎡の土地に40㎡の建物が建っている場合で考えてみましょう。

階数建蔽率容積率
1階建て40%40%
2階建て40%80%
3階建て40%120%
4階建て40%160%

上表のように、階数が多いほど容積率は上がります

容積率は、建物の立体的な大きさを制限することを目的とし、その地域を利用する人口を制限する働きがあります。

それぞれ用途地域ごとに建蔽率と容積率の制限が定められているため、対象の土地の用途地域を確認し、許容される建蔽率・容積率の範囲内で建築計画を決定する必要があります。

日影規制について

日影規制とは、簡単に言うと隣地に日影を作っていい時間の制限になります。

日影規制は、2つ区分に分け、連続で日影を作っていい時間の上限を設定しています。
例えば、5~10mの範囲は4時間以内10m超は3時間以内にしなさい。といった具合です。

最低敷地について

最低敷地とは、敷地面積を〇㎡以上設けなさい。といったものです。

例えば、最低敷地100㎡の規制があったとします。1筆210㎡の土地があったとすると105㎡×2筆に分筆し、戸建住宅を2棟建てることができます。

しかし、1筆180㎡の土地の場合、最低敷地が100㎡なので分筆して2棟建てることができません。

このように、最低敷地の規制は何区画に分割できるかに直結するため非常に重要な規制だと言えます。

接道道路について

接道義務とは、建物を建てる場合、敷地が建築基準法上の道路に2m以上接していないとだめだよ!といったものです。火事が起こった際、消防車が道路を使ってその建物までアクセスできる環境を確保するためにこのような規定が設けられています。

[建築基準法上の道路]とは何か。下表にまとめました。

建築基準法第42条道路の内容
第1項第1号道路法による道路。幅員4m以上
第2号
(開発道路)
都市計画法・土地区画整理法・旧住宅地造成事業などによる道路。幅員4m以上
第3号
(既存道路)
都市計画区域もしくは準都市計画区域の指定時に既に存在していた道路。幅員4m以上
第4号
(計画道路)
道路法・都市計画法・土地区画整理法などによる新設又は変更の事業計画のある道路で、2年以内にその事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定した道路。幅員4m以上
第5号
(位置指定道路)
道路法・都市計画法・土地区画整理法などによらず築造する道路で、特定行政庁から位置指定を受けた道路。幅員4m以上
第2項(みなし道路)都市計画区域もしくは準都市計画区域の指定時に既に建築物が建ち並んでいる道路で、特定行政庁が指定した道路。幅員4m未満

ざっくりとしたイメージは、4m以上の道路となりますが、4m未満の道路でもセットバックをすれば建物の建設が可能になる場合もあります。

[セットバック]とは、道路幅が4mに満たない場合、敷地の一部を道路として利用できるような形状にすることで、道路要件を満たすやり方です。

役所の道路を管理している部署に聞き取りをすれば、道路幅員や建築基準法上の道路の種類を教えてくれます。ですが、自治体が管理している台帳上の道路幅員ではなく現況幅員を優先させる自治体もありますので、現地調査を行う必要もあります。

また、見かけ上は道路ですが、公図を確認すると細い帯が道路と敷地の間に存在する場合があります。おそらく、その細い帯状の土地は、用悪水路青道だと思われます。

[青道]とは、昔水路として利用していた土地で国から市に管理移管された無地番の土地です。現在も水路としての利用がある場合もあります。公図の前身ともいえる「絵地図」に青色で着色されていたことから、[青道]と呼ばれています。

道路と敷地の間に用悪水路や青道がある場合、厳密には道路と敷地が接していないことになるため、接道要件を満たすことができません。

そのような場合、乗り入れ口として水路占用許可を取ることで接道要件を満たすことができます。

接道道路の確認は、役所への聞き取りや法務局で取得した資料の確認をしながら行うことが一般的です。

単に細い帯状の土地があるかなどを確認するために登記簿が必要な場合は、法務局に行かなくても登記情報提供サービスを利用すればインターネット上で資料を取得することができます。

登記情報提供サービスのリンクはこちら

法務局に行く手間が省けるだけでなく、少しだけ取得に要する費用も安くなります。

その他確認事項について

その他にも、外壁後退や、建蔽率・容積率の緩和措置、総合設計制度などについても確認する必要があります。

さいごに

いかがでしたでしょうか。

この記事が一人でも多くの方のお役に立てると嬉しいです。

当事務所では、不動産調査業務の代行を行っております。(不動産調査業務のページはこちら)

ご不明な点がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください!

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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