〇第2弾[役所調査(都市計画法)編]不動産調査について解説します!

不動産調査における役所調査とは?

役所調査の話題に入る前に、不動産調査全体の流れや概要について解説したコラムがありますので、まだお読みでない方はぜひ一度参考に読んでみてください。

(こちらから全体の流れや概要についてのコラムへ移動できます。)

今回は、不動産調査の一つの要素である[役所調査]に焦点を当てて解説していきたいと思います。

まず[役所調査]とは、市町村や都道府県などの行政機関に対し、法令上の制限について聞き取りを行うものになります。

法令とは、全国的に適用される[法律]や、自治体の独自ルールとして制定された[条例]などを指します。条例による規制がある場合、自治体によって必要な手続きや規制内容が異なりますので、必ず対象となる不動産が存在する自治体に対して調査を行う必要があります。

[役所調査]は、確認するべき項目がたくさんあるため、今回の記事では[都市計画法]に関する調査内容について解説させていただきます。

調査内容の解説に入る前に、[都市計画法の目的]について解説させていただきます。

都市計画法とは

都市計画法とは、どのような目的で制定されたものなのでしょうか。都市計画法第一条に目的規定がありますので、以下に示します。

(目的)

第一条 この法律は、都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。

都市計画法第一条

簡単な言葉に置き換えると、まちづくりの大枠や方針を定めることで、無秩序な都市開発を抑制し、国土を具合よく発展させよう!といったものです。

余談ですが、この[都市計画法]が制定された背景は、戦後の高度経済成長が関係しています。

この頃、産業の発展に伴い人口が都市に集中するようになりました。また、産業が発展した都市の周辺地域においても無秩序に市街化が進み、公害の発生など都市環境の悪化が問題視されるようになり、秩序あるまちづくりのルールを設けることが急務となっていました。

そこで、旧都市計画法(大正8年制定)を全面的に見直し、総合的な土地利用計画の確立、都市計画における広域性及び総合性の確保、国と地方間の事務配分の合理化を図るといった内容を盛り込んだ、新都市計画法が昭和43年に制定されました。

背景を知ると、目的も理解しやすいですね。

では、これらの目的を達成するため、どのような制限があるのか、また、どのようなことを役所調査で確認する必要があるのかについて、以下で解説していきたいと思います。

都市計画法による制限

都市計画法の目的を達成するため、まちづくりをしていくエリアを都道府県が定めています。

これを[都市計画区域]といい、さらにその[都市計画区域]を区分分けし、[市街化区域][市街化調整区域]に分けています。そのほか細かい区分区域はありますが、主なものについて解説をしていきたいと思います。

市街化区域と市街化調整区域

市街化区域とは、既に市街地である区域、または今後10年以内に市街化を図るべき区域です。

この市街化区域は、都市計画上、宅地開発がされるべき区域と読み替えてもいいかもしれません。行政としては、市街化区域に人口を集中させたいと思っています。

一方、市街化調整区域とは、市街化を抑制すべき区域です。

市街化調整区域は原則、建物を建てるなどの開発は許されません。都市計画上、宅地開発をして欲しくない区域と読み替えてもいいかもしれません。

ただし、市街化調整区域でも絶対に建物を建てられないかというと、そうではありません。建築の制限はありますが、要件を満たしている場合、例外として建物を建てられる場合もあります。

用途地域

市街化区域を「住居専用地域」「商業地域」「工業地域」などの地域に市町村が割り振ることで、区域ごとに用途分けを行っています。

住居専用地域とは、住居の環境を保護することを目的とする地域であり、住宅などを建てることはできますが、大きな騒音を出す大規模な工場などは建てることができません。

商業地域とは、商業の利便性を高めることを目的とする地域であり、店舗や住宅などを建てることはできますが、引火性のある危険な薬品を製造する工場などは建てられません。

工業地域とは、工業の利便性を高めることを目的とする地域であり、工場を建てることはできますが、学校や病院などは建てることができず、場合よっては住居や店舗なども建てることができません。

このように市町村が用途ごとに割り振った地域を「用途地域」と呼び13種類に区分されています。 用途地域ごとの特徴は以下のとおりです。

(1)第一種低層住居専用地域

「第一種低層住居専用地域」は、「低層住宅に係る良好な住環境を保護するため定める地域」とされています(都市計画法9条1項)。

低層住宅しか建築ができない地域です。高さが10mまたは12mまでに制限されているほか、道路斜線規制・北側斜線規制・日影規制や外壁の後退距離制限があります。戸建住宅に限らず、要件を満たしていればマンションやアパートも建築可能です。

また、住宅ではありませんが、住生活に必要な診療所などの施設(50㎡以下の小型のものに限る)を建築可能です。

第一種低層住居地域では、閑静な住環境が確保されるため、都市部から離れて穏やかに生活したい人などに適してるといえます。

(2)第二種低層住居専用地域

「第二種低層住居専用地域」は、「主として低層住宅に係る良好な住環境を保護するため定める地域」とされています(都市計画法9条2項)。

第一種低層住居専用地域と同様に、低層住宅に特化した閑静な住宅地の形成を目的としていますが、第一種低層住居専用地域と比べると建築制限が少し緩和されています。高さ制限は第一種と同様に10mまたは12mです。

150㎡以下であれば、日用品販売店舗や飲食店、診療所などの建築が可能となります。

第二種低層住居専用地域は、住生活を重視するものの、利便性も捨てがたい方に適しているといえます。

(3)第一種中高層住居専用地域

「第一種中高層住居専用地域」は、「中高層住宅に係る良好な住環境を保護するため定める地域」とされています(都市計画法9条3項)。

第一種中高層住居専用地域では、建築される建物の高さに制限はありません。

その一方で、道路斜線規制・北側斜線規制・日影規制に加えて、隣地斜線規制が適用されます。

[隣地斜線規制]とは、隣地の日照や通風、採光を確保するために、住宅などを建設する際に、その高さや形状を規制することをいいます。

床面積が500㎡以下かつ2階建て以下であれば、ある程度大きな商業施設や大学、病院などの建築も可能です。

第一種中高層住居専用地域は、マンションに住みたい方で、落ち着いた住生活を求める方に適しています。

(4)第二種中高層住居専用地域

「第二種中高層住居専用地域」は、「主として中高層住宅に係る良好な住環境を保護するため定める地域」とされています(都市計画法9条4項)。

高さ制限がない点や、道路斜線規制・北側斜線規制・隣地斜線規制・日影規制については、第一種中高層住居専用地域と同様です。

その一方で、第二種中高層住居専用地域では、建築可能な店舗等が床面積1500㎡以下のものまで建築が可能になります。また、事務所の建築も可能です。

第二種中高層住居専用地域は、マンションに住みたい方で、利便性を求める方に適しています。

(5)第一種住居地域

「第一種住居地域」は、「住居の環境を保護するため定める地域」とされています(都市計画法9条5項)。

高さ制限に加えて北側斜線規制もなくなるため、他の「住居専用地域」に比べると、より密集して住宅を建築することが可能となります。

また、床面積3000㎡までの店舗等が建築可能となるほか、旅館やボウリング場などの遊戯施設も、床面積3000㎡までであれば建築可能です。

住宅地ではありますが、商業施設も多く集まっている地域になります。

第一種住居地域は、閑静な住環境よりも利便性を求める方に向いている地域といえます。

(6)第二種住居地域

「第二種住居地域」は、「主として住居の環境を保護するため定める地域」とされています(都市計画法9条6項)。

高さ制限・北側斜線規制がない点は、第一種住居地域と同様です。

店舗等は床面積10000㎡まで、事務所等は床面積3000㎡まで建築可能であり、カラオケボックスやパチンコ店などの建築も可能となりますが、映画館や風俗営業に関する施設などは建築ができません。

第二種住居地域は、住宅と商業施設が混在する地域となっています。

(7)準住居地域

「準住居地域」は、「道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域」とされています(都市計画法9条7項)。

建築できる建物の規模は第二種住居地域とほとんど同じですが、倉庫や小規模な映画館の建築も可能となっています。

準住居地域は、国道や幹線道路の沿道に設定されることが多いです。

(8)田園住居地域

「田園住居地域」は、「農業の利便の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域」とされています(都市計画法9条8項)。

2018年4月に設けられた用地地域で、田園と市街地の共存を図る目的で設定されます。

田園住居地域では、農地の造成や農地の用途変更の際、市町村長の許可が必要です。
また、住宅については第一種・第二種低層住居専用地域と同様の規制を受け、高さ10mまたは12mまでの住宅しか建築できません。

店舗の建築も日用品販売店舗や飲食店などに限られます。

低層住居専用地域と違う点は、農産物直売所や農家レストランなどが建築可能で、さらに、農産物・農薬などを貯蔵する倉庫や、農産物を生産・集荷・処理する工場も建築可能となっています。

(9)近隣商業地域

「近隣商業地域」は、「近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するため定める地域」とされています(都市計画法9条9項)。

近隣商業地域では、150㎡の安全と認められる工場や、300㎡以下の修理工場がある自動車整備工場も建築できます。キャバレー・個室付き浴場や危険物の貯蔵、処理量が多い施設等を除いて、建築できる建物の種類に制限がありません。
また、道路斜線規制や隣地規制についても、住居系の用途地域よりは緩やかになっています。

(10)商業地域

「商業地域」は、「主として商業その他の業務の利便を増進するため定める地域」とされています(都市計画法9条10項)。

商業地域では、近隣商業地域で建築可能な建物に加えて、さらにキャバレーや個室付き浴場等も建築できます。

この地域は、人の出入りが多く住むというよりは、働く場所のイメージが強いです。

(11)準工業地域

「準工業地域」は、「主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するため定める地域」とされています(都市計画法9条11項)。

準工業地域では、個室付き浴場等を除いて、商業地域で建築可能な建物がすべて建築できます。
また、危険物を取り扱うような工場を除き、ほぼ全ての建物を建築することが可能です。

準工業地域は、主に工場に隣接した地域に当たるため、工場労働者が住居を構えるのに向いている地域といえます。

(12)工業地域

「工業地域」は、「主として工業の利便を増進するため定める地域」とされています(都市計画法9条12項)。

工業地域は、工業地帯として発展させていきたい地域になります。危険物を取り扱う工場の建設が認められており、工場・倉庫等の施設の建設に制限がありません。

その反面、床面積10000㎡を超える店舗や学校、病院は建築することができません。

(13)工業専用地域

「工業専用地域」は、「工業の利便性を増進するため定める地域」とされています(都市計画法9条13項)。

工業専用地域には、工場以外の用途の立地が制限されており、そもそも住宅を建築することができません。

このように、用途地域ごとで建築制限がありますので、不動産取引や建物の建築を計画する際には、対象となる土地がどの用途地域に該当するのかを調査する必要があります。

開発許可と建築許可

一定規模以上の開発行為を行う場合、許可申請が必要になる場合があります。

開発許可

一定規模以上の開発行為を行う場合、都市計画法29条に基づく開発許可申請をする必要があります。

都市計画法における「開発行為」とは、建物を建築することや、それに伴い土地の形状を変える行為を指します。

都市の健全な発展と秩序ある整備を図るために、土地利用の適正化や公共施設の確保を目的としたものです。

また、許可申請は思っている以上に時間がかかります。

どれくらいの期間がかかるのか併せて確認し、建築工事がいつから着工できるかなども把握したうえでスケジュール管理をする必要があります。

おおまかな流れは以下のとおりです。

  1. 事前相談

開発行為の計画(土地利用計画図)を役所に提示し、関係部署との事前協議を行います。その際、道路幅員の確認、緑地や公園の配置、排水先の確認などのチェックを受け、修正しながら計画を確定していきます。

  1. 都市計画法32条 同意・協議

開発行為に関連する公共施設(道路・公園・下水や水路など)の管理者と協議を行います。開発行為後に公共施設として帰属させる施設がある場合、管理することとなる部署とも協議を行います。

  1. 都市計画法29条許可申請

事前相談と32条同意・協議の段階ですり合わせをし、協議内容を反映させた開発の内容に仕上がっているため、役所側の許可手続きと考えて差し支えありません。

逆に言うと、この29条許可申請を提出できるまでの事前協議に時間を費やすことになります。

  1. 工事の着手

開発許可を取得したら、申請時に意見が付いた注意事項などを遵守し、計画どおりに工事を実施します。

  1. 竣工検査

工事が完了したら、役所の検査を受けます。帰属させる公共施設がある場合、管理者から手直しの指示があればこのタイミングで手直しをすることになります。

  1. 検査済証発行

検査が完了したら、検査済証が交付され、開発行為の手続きが終了します。

建築許可

市街化調整区域は本来、市街化を抑制すべき区域であるため、開発許可を受けた土地以外で建築物を建てたい場合、建築許可を得る必要があります。

許可を得るためには、都市計画法第34条で掲げる各号のうち、いずれかに該当している必要があります

また、敷地内の下水などを有効に排出することができるかなど、技術的な基準も満たす必要があります。

その他の項目

その他にも、都市施設や地区計画、土地区画整理事業の区域内かなどについて関係部署へ確認する必要があります。

まとめ

都市計画法に関する役所調査では以下のポイントをおさえましょう!

  • 対象地は市街化区域?市街化調整区域?
  • 対象地の用途地域は何?
  • 造成工事や建物の建築を予定している場合、開発許可または建築許可が必要?

さいごに

この記事が一人でも多くの方のお役に立てると嬉しいです。

当事務所では、不動産調査業務の代行を行っております。(不動産調査業務のページはこちら)

ご不明な点がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください!

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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